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低温度差スターリングエンジン 組み立て編

その3 部品の組み立て    2020年12月21日   前回の製作編と併せてご覧下さい。

末尾に新しい動画を掲載しましたのでご覧下さい。
StirlingEngine_03.jpg

1)ディスプレ―サ・シリンダーの組み立て
:私は手持ち材料の関係で厚さ5㎜の透明アクリル板を使いましたが、厚さ20㎜が有れば1枚でOKです。
①厚さ5㎜のリング4枚を重ねて接着し、高さ20㎜のシリンダーを作りますが、一度に4枚を接着せずに2枚ずつ接着
します。 先ず、ズレを防ぐために太さ1.6㎜の真っ直ぐな針金を用意してリングに空けた1.6㎜の穴対角4ヶ所に通し
ます。 また、上側リングの内側下部を少し45度に面取りすると接着液が垂れずに接着面に浸透します。
2枚重ねが二組出来たら、次にこの二組を接着します。アクリル接着液の流し込みには注射器を使うのが便利です。

②シリンダーの接着が終わったら、シリンダーの上側の下穴1.6㎜にM2のタップ(深さ約8㎜)を切ります。
無理にタップを切るとひび割れの恐れがあるので、丁寧にゆっくりと12ヶ所を加工します。
但し、コールド面に冷却水用のプールを設けない場合は、タップを切る必要が無く直接2X6タップタイトにて接合します。

StirlingEngine_00l.gif

2)冷却水用プール枠の組み立て
コールド面冷却水用プール枠のリングもディスプレ―サ・シリンダー同様に接着します。

3)パワーシリンダーの組み立て
先ず、パワーシリンダーベースの上下部品を接着します。次にパワーシリンダーのガラス管下部に
接着剤(セメダインスーパーXクリア)を塗布して深さ3㎜の底部まで垂直に押し込みます。

4)ディスプレ―サガイドの組み立て
①先ず、ディスプレ―サガイドの上下を接着しますが、2.0㎜の穴に2㎜径の真鍮丸棒を差し込み、抵抗が無く
軽く動くことを確認、もし固いようであれば穴を少し広げます。そして丸棒に通した状態で上下を接着します。

②次に製作編で記したようにシールド部から空気の漏れが無い程度に軽く密着しているかを確認した後に
真鍮丸棒を通した状態で下部と接着します。 また、ディスプレ―サシャフトにはグリスを塗布してから挿入します。

5)フライホイール・タワーの組み立て
フライホイール・タワーの前後2枚のパネルを接着しますが、先ず、ベアリングホルダーにベアリングをはめ込み、
5㎜径真鍮シャフトを差し込み、センターにズレが無く軽く回る状態で接着します。

6)上板(コールド面)アルミ板への取り付け
StirlingEngine_04.jpg

①ディスプレ―サガイドをアルミ板の中央にゴムパッキンを介して置き、裏側から3本のタップタイト2X6にて
固定します。 この後、ディスプレ―サを下部から挿入して軽く動くことを確認しておきます。

②次にパワーシリンダーを同様に固定します。

③フライホイール・タワーを同様に固定します。

④ディスプレ―サ・シリンダーを取り付けますが、先ず、プール枠のリングに12本のM2x20ボールトを通し、
ゴムパッキンを介してアルミ板に差し込みます。 次に裏側からゴムパッキンを介してシリンダーを押し当て、
プール枠側からボールトを締め付けますが、偏らず対角に交互しながら少しずつ行います。

⑤ここまで出来たら、ディスプレ―サを挿入してからゴムパッキンを介して底板(ホット面)のアルミ板を
シリンダー下部に2X6タップタイト12本にて取り付けます。
このネジ頭がカップに載せた本体が落ちるのを止める役目をします。

7)フライホイールとパワーピスト、ディスプレ―サのセット
①フライホイールの取り付け
フライホイール・タワーのベアリングにシャフトを通してフライホイールを取り付けますが、ベアリングとフライホイールの
間に隙間を作らないと接触して回転が悪くなります。ここに0.7㎜のステンレス線をリング状に加工したスペーサーを
入れます。リングの作り方は、シャフトにステンレス線をコイル状に蜜巻きし、1周分をカットしたOリングを2個作ります。

②ディスプレ―サ・クランクの取り付け
フライホイールをシャフトに通したら回転させて振れが無いことを確認し、ディスプレ―サ・クランクを重ねて接着します。
接着剤が乾いたらM3セットスクリューでシャフトに固定します。

③ディスプレ―サ連接棒(Connecting rod:通称コンロット)の取り付けと調節
ディスプレ―サ・シャフト尖端の0.8㎜穴とディスプレ―サ・クランクに取り付けたM2ステンレスネジとを転結するロットを
0.7㎜ステンレス線を加工して作ります。先ず、ステンレス線を80㎜程に切断し、片方の先端に2㎜のループを作ります。
針金の加工には先丸ペンチが便利です。同様の品がダイソーの300均でも購入できます。 下の画像を参照
sakimaru.jpg

先に加工したステンレス線のループにM2X8ボールトを通し、ロック用ナットを入れてクランクのネジ穴にセットします。
次にクランクが一番下がった状態でディスプレ―サの位置が底板から2㎜上となる位置でディスプレ―サ・シャフト尖端の
穴に入る位置でステンレス線を90度折り曲げて挿入後、抜け止めに先端を少し曲げておきます。 下の画像を参照
Displacer_crank.jpg

④パワーピストン・コンロッドの取り付け
パワーシリンダーからピストンを取り出し、最初に付いていたコンロッドが短いのでを外してステンレス線と交換します。
外し方は、コンロッドを持って外側のグラファイト製スリーブを半分ほど押し下げると金属ピストンに挿入したピストンピンが
現れます。このピンを針金の先で押すとコンロッドが外れます。
ステンレス線の長さは80㎜程に切断してから作業を行います。
このピストンピンは直径が2㎜なので、直径0.7㎜のステンレス線を使って先端に内径2㎜のループを作ります。
出来たループを元のコンロッドと同じように金属ピストンに取り付け、グラファイト製スリーブを元に戻します。
次にシリンダーにピストンを挿入し、ピストン側クランクをフライホイールシャフトに挿入しますが、先に作ったOリングを
忘れずに嵌め込みます。
PowerPiston.jpg

⑤ピストンコンロットの長さ合わせ
ピストン側クランクが一番上側(上死点)の位置にある時、シリンダー上面の少し下側にピストンのスリーブが来るように
コンロッドの長さを調節します。 長さが決まれば、その位置にクランクピンのループを作り、先のディスプレ―サ側と
同様にM2X8のボールトナットで固定します。 下の画像を参照
PowerPistonCrank.jpg

8)クランク角度の調整
ここでは、フライホールの回転方向をディスプレーサ側から見て右回りに設定しているのでピストン側クランクピンの
位置より、ディスプレーサ側クランクピンの位置が90度回転方向に進んだ位置にセットしています。
位置が決まれば、両側クランクのセットスクリューを締めて動かないようにします。
もし反対方向に回す場合は、今の位置から180度位置を変えればOKです。

9)テスト運転
では、カップに熱湯を注いで本体を載せます。暫くして底板(ホット面)が温まると少し指でフライホイールを
動かすだけで回転を始めます。 お湯を使うのでやけどしないように注意して下さい。
お子様と一緒に動かす場合は、お湯ではなく貼るカイロなどを使って安全に配慮して下さい。
私の場合はステンレスの二重構造保温マグカップを使うと3時間程回転を続けます。
また、上板(コールド)側に冷蔵庫の氷を一片置くと、掌に載せて自分の体温との差で動かせることが出来ます。

最後に動画をご覧下さい。 12月24日修正版に更新しました。



最後までご覧いただきまして有難うございました。
次回は底面以外をアクリル板で作ったスターリングエンジンを紹介します。


皆様の参考になれば幸いです。

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テーマ : 工作の作品
ジャンル : 写真

低温度差スターリングエンジン 製作編

アクリル板とアルミ板をCNC加工して作る低温度差スターリングエンジン
その2 製作編 各パーツの製作
    2020年12月12日



主な部品リスト
品名サイズ数量 参考
透明アクリル板厚さ5㎜ 100X200㎜2枚アクリル屋ドットコム 端材
白色アクリル板厚さ5㎜ 100X200㎜3枚アクリル屋ドットコム 端材
アルミ板厚さ2㎜ 100X200㎜1枚ヨドバシ 光モール HA-2013 [アルミ板 2x100x300mm]
真鍮丸棒直径5㎜ 長さ27㎜1本ヨドバシ 光モール BM995-5 [真鍮丸棒 5×995mm]
真鍮丸棒直径2㎜ 約55㎜1本ヨドバシ 光モール BM995-2 [真鍮丸棒 2×995mm]
ゴムシート厚さ1㎜ 100X約400㎜ 1枚ヨドバシ 光モール KGR-1102 [ゴムロール巻 1×100mm×1m]
発泡スチレンボード厚さ5㎜ 100X100㎜1枚ダイソー カラーボード定尺
パワーピストン シリンダー径約15㎜1本AMAZON 2本660円
ステンレスビスM2X20㎜12本AMAZON (トラスコ) ナベ頭小ネジ B05-0220
鍋頭タップタイトP2X6㎜24本ヨドバシ 大里 532-661 1袋30本入り
ベアリング850ZZ2個ヨドバシ
ステンレス線0.7㎜径少々手持ち品

立面図 画像をクリックすると大きい画像が見れます。 注意:各図は実寸ではありません。
StirlingEngine_00l.gif

1)アルミ板の加工と配置図 
ディスプレ―サ・シリンダーの上板(コールド面)と底板(ホット面)に使う厚さ2㎜のアルミ板をCNCを使って加工しました。
al_base.gif

配置図:左側がディスプレ―サ・シリンダー、右側が上板(コールド面)で各部品をアルミ板裏側から
タップタイトネジを使ってゴムパッキンを介して取り付けます。
Parts_layout1.gif

2)ディスプレ―サ・シリンダーの加工
左側がディスプレ―サ・シリンダーで4枚作ります。右側がアルミ上板(コールド面)の冷却用プールの枠で2枚作ります。
ディスプレ―サ・シリンダーのネジ穴が1.6㎜、プール枠のネジ穴が2.0㎜です。
:手持ちのアクリル板が5㎜厚だったのでこのように設計しましたが、10㎜厚を使えば枚数を少なくできます。
Cylinder.gif

3)フライホイール・タワーの加工
切削したアクリル板を二枚背中合わせにして接着しますが、ベアリングをフォルダーにはめ込み、
シャフトを通した状態でズレが無いように接着液を注入します。
出来上がれば、脚部底面に取り付け用のネジ穴1.7㎜径、深さ6㎜の穴4ヶ所を垂直に開けます。
左右脚の穴間隔は27㎜です。片側に2か所で板厚のセンターです。
tower1.gif

4)フライホイールの加工
厚さ5㎜のアクリル板をCNCを使って加工します。
Flywheel1.gif

5)パワーシリンダーベース他小物類の加工
①パワーシリンダー用ベース
上板(コールド面)にネジ止めする下部とシリンダーが入る上部で構成します。上下はアクリル接着液にて接着。
シリンダーが入る部分は直径15.1㎜、深さ3㎜のポケット加工をしてあり、ガラスシリンダーの下部に接着剤を
塗布して奥まで押し込めばOKです。

②ディスプレーサのシャフトガイド
こちらも上板にネジ止めする下部とその上に接着する中部のセンターには2㎜径の穴があり、この中に外径2㎜の
ディスプレーサ・シャフトが通ります。接着時はシャフトを通してセンターがズレないように注意します。
その上部にシールド用の厚さ5㎜、外径12㎜、内径1.95㎜のシールド部を接着しますが、シャフトと隙間があると
ディスプレーサ内部の空気が漏れるので調整が必要です。
私は先端を尖らせた2㎜の真鍮丸棒にオイルを付け、ドリルで回転させながら押し込み馴染ませる事により隙間が
なく、滑らかに動くようにしました。

③パワーピストンとディスプレーサ用クランクの加工
連接棒(コンロット)の軸にM2ステンレスネジを使いました。このネジが入る下穴1.6㎜にM2タップを切ります。
クランクを5㎜シャフトに固定するための下穴2.5㎜を開け、M3タップを切りM3セットスクリューを挿入します。
PowerCylinderBase1c.gif

6)ディスプレーサの加工
①ディスプレーサの材料は百均で購入できるスチレンボード(ダイソーでは商品名カラーボード)厚さ5㎜を用意します。
これを外径80㎜の円盤状にカットしますが、作業がし易いように100X100㎜の大きさにカットします。
正確にカットするには、オルファのコンパスカッターを使うと綺麗に切り抜けます。
また、切り取った後の角を紙やすりで丸く削り、空気の流れがスムーズになるよう滑らかに仕上げます。
OLFA.jpg

②この時にスチレンボードに直接コンパスの針を刺すと穴が大きく変形するので、スチレンボード表裏のセンターに
両面テープを張り付けます。両面テープの剥離テープはかなり強度があるので穴が拡大しません。
もう一点注意する事は、正確に垂直を出す必要があるのでボール盤で0.8㎜程度の下穴を貫通しておきます。
コンパスカッターは表裏両面からカットすると綺麗に切り取れます。

7)ディスプレーサ・シャフトの加工と取り付け
①先ず、直径2㎜の真鍮丸棒を長さ55㎜に切断し、シャフトの上端から3㎜の位置に0.8㎜のドリルで穴を貫通します。
2㎜の真鍮丸棒に0.8㎜の穴を開けるのは難しいと思いますが、ビットが滑らないように少しやすりで平にしてから
ピンバイスを使って行えば、正確に貫通出来ます。
Displacer1.jpg
②スチレンボードに直接2㎜の真鍮丸棒を接着するだけでは強度が足りないので、厚さ0.06㎜の銅箔を直径30㎜の
円盤状にカットしてシャフト下端から5㎜の位置にはめ込み、半田付けしてからスチレンボードに面接着しています。
スチレンボードに使う接着剤は、スチレンが溶解しないセメダインスーパーXクリアを使いました。

8)ゴムパッキンの加工
厚さ1㎜幅100㎜の1mロールを使ってシリンダーやピストンベースなどのパッキンを加工します。
①シリンダー用パッキンは予めロールから100X100㎜にカットします。先に加工した接着前のプール枠リングを
ゴムシートの上に置き、動かないようにして千枚通しなどを使ってネジ穴12ヶ所に下穴を開けます。
次に2㎜の皮ポンチを使って穴を開けますが、ずれが無いように下穴より少し細いピン10㎜を差し込み、
そのピンにポンチを差し込んで回転させると正確に2㎜径の穴が開きます。

②ゴムシートの内側の切断はシリンダーリングをネジ穴と合わせ、鉛筆で型ぞってからハサミで切っても良いが
リングを押さえながら直接カッターナイフで切ってもOKです。ゴムシートの外側は組み上がってからカッターナイフで
外側から切り取ると綺麗に仕上がります。 このパッキンを3枚作ります。

③パワーピストン・ベース、ディスプレーサ・ガイド、フライホイール・タワー脚部のパッキン加工
先に作ったシリンダーパッキンの内側端材を使い、現物に合わせて切り抜きます。

9)パワーピストン
試作ではパワーシリンダーとパワーピストンをアルミパイプを加工して作り一応動いたのですが、少し滑らかさに
欠けるため、代替品を探したらガラスシリンダーとグラファイピストンを使ったキットがアマゾンで販売されてるのを
見付けて購入しました。
下が購入したパワーピストンのキットです。販売業者によっては価格がまちまちですが、私が買ったのは
2個セットで660円、中国から約2週間で届きました。
このパワーシリンダーを前述5)の①パワーシリンダー用ベースに接着して使います。
連接棒(コンロット)が金属プレス製だったので、長さが調節出来る0.7㎜のステンレス線に置き換えて使用。
ガラスシリンダー外径15㎜、長さ30㎜
PowerPiston.jpg


次回はその3 製作編 組み立てを掲載します。

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低温度差スターリングエンジンの製作

アクリル板とアルミ板をCNC加工して作るスターリングエンジン その1
2020年12月5日
スターリングエンジンは1816年にロバート・スターリングにより実用化された歴史のあるエンジンです。
StirlingEngine_00l.gif


このスターリングエンジンの概要
コーヒーカップに注いだお湯を熱源にフライホイールが回転する低温度差スターリングエンジンです。
ここでは、コーヒーカップを使いましたが、ステンレスの保温マグカップならお湯が冷めにくく長く動きます。
子供と遊ぶには、お湯が危険なので「ほっかほかカイロ」でも動きます。
また、上部の受け皿に氷を置くと更に上下の温度差が広がり回転数が増します。
下部の半透明シリンダー内にはスチレンボードを加工したディスプレ―サ(赤い円盤)が入っていますが、
シリンダーとの間に2㎜ほどの隙間を設けています。
このディスプレ―サはフライホイールに付けたクランクと連結して上下します。
反対側のクランクにはパワーピストンが連結していてディスプレ―サのクランクより90度遅れに設定しています。

動作原理については、私が説明するよりも名大のホームページに詳しく説明されていますので参考にして下さい。
「名大、低温度差スターリングエンジンの回転メカニズムを解明――わずかな温度差を回転運動として利用「」を開く

動画をご覧下さい。


次回から製作記事を掲載します。

皆様の参考になれば幸いです。

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CNC_Paradise

Author:CNC_Paradise
木工・彫刻・機械工作・電子工作が
大好きで自作のCNCを使って工作を
楽しんでます。

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